杜の都のSF研日記(アーカイブ)

旧「杜の都のSF研日記」http://d.hatena.ne.jp/sftonnpei/ 内容を保管しております

SFマガジン総ざらい

ときどき「おぉっ」とくるものがある。しかしオールタイムベストはそんなに変わってるわけでもないなぁ
ソラリスは前々から上位に食い込んではいたけど。そんな中で目立つのはやっぱりイーガン。
あとハイペリオン。つよすぎ

膚(はだえ)の下

完結する号(マガジン04年1・2月号)がなぜか無く、完全には読みきれず。(コラ
 著者も語っているが主人公、悩み方が可愛い。それもよくある「人間になりたい人形」ではなく
その正反対も望んでいないというキャラが延々と他人もしくは同類や機械人と繰り出す哲学議論が素晴らしい。
しかも今度の主人公の相棒は猫ではなくイヌだ!(人造犬だが)
しかし、毎連載ごとに「フムン」がある気が。互いに議論してるんだから当然といえば当然だが。

ジャムになった男

 雪風第3部。いきなり「アニメ最終巻にインスパイアされて」みたいなことが書かれていて
まさか!ブッカーと(ブッカーの)妄想零の話か???!!!!と思ったら一安心。ジャムの設定のことでした。
大活躍した末に遁走したアンセル・ロンバート大佐のこともあろうにリン・ジャクスンへの手紙。
最初からこのノリならこれからも期待できそうだ。

パンドラ〈上〉 パンドラ〈下〉

南山宏提唱のシードマスター仮説に近いけど関係は無い、だろう。パンスペルミアという言葉がひとつもないし。
異星のテラフォーミングを受ける人類の戦いを描く作品が、視点はあくまで人間側。
前半:ハイドゥナン+海外ノベル(ガイア―母なる地球〈上〉 (ハヤカワ文庫SF) とか降伏の儀式〈上〉 (創元推理文庫)とか)
後半:太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)+軌道傭兵*1
 修正するっ!自分の05年度国内BESTはやはりこいつだっ!なんだけどいろいろと思うところもある。
 谷甲州作品というのはたとえSFでも「登山」なんだと思っている。荷造りから始まり、
装備をそろえ、キャンプを作り、これを繰り返して頂上にアタックする。そういう感じ。
が、今回は「二合付近までは四駆でかっ飛ばし、そこから物資をかき集めながら進んでいく」という印象がある
前半初期の朝倉博士のフィールドワーク+戦闘がちょっと駆け足すぎる。突撃かますし。
タオ博士によるパンドラ理論の登場もタイミングが悪い。議論の空気をもちっと読みたい
でも、その後の派遣された自衛隊と共同のサバイバルは好き。いかにもJICA組。
 後半は米日中(ロシアは事故多発でなんと離脱。らしくない)による彗星阻止作戦になる。
日本の人選における「軍人枠」論争とか出発前の事故調査の主導権をめぐる米中の確執とか
そのへんは冗長なぐらいだがこれを楽しめるのが甲州ファンか。
 笑ったのは中国が「世界を救う宇宙船建造のためにも」という大義名分で
ロケット技術を他の第三世界に提供しようとするのをアメリカが止めようとすると
中国が「では『平和目的』でロケットを作っているという日本*2が提供すればいい」と突っ込むシーン。
 いずれにせよ、甲州ファンのための総決算というところ。一冊は著作を読んでないとあえてお勧めはしないかな。
ラストはらしくない。暗示にしてもちと明るかないか。これが「きぼう」は残ったってやつか

目を擦る女 (ハヤカワ文庫JA)

 お勧めは『ターイムマッスィ――ン』*3を作った変な友人との会話「未公開実験」と
ソロバンコンピューターネタ「予め決定されている明日」。
「空からの風が止む時」は初めて読んでいる最中にオチがわかった。
やっぱり現代ハードSF三賢人、一人一人奥が深い。

*1:ファンならおなじみSTS「イントレピッド」や往還機「あすか」が登場。ただし「あすか」はHOPEではなくSSTO

*2:関連リンク:朝鮮新報:春・夏・秋・冬 http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/%82%8A-2006/08/0608j0302-00001.htm それをアンタらが言っちゃオシマイだ

*3:Dr.イーヴル@オースティン・パワーズみたいにポーズをとるのがコツ