杜の都のSF研日記(アーカイブ)

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宇宙創世記ロボットの旅 (ハヤカワ文庫 SF 203)

主人公を固定した短編集。なかなか面白かった。機械工学や量子論ラプラスの悪魔などの理論を暴走気味に解釈したものなのだろう。基本は科学、でもエセ科学
読んでいて少々気になったのは、まるで誉め言葉であるかのように貶し言葉が用いられていること。出てくる王様の名前が酷いことひどいこと。醜悪王とか呼ばれて嬉しいんですか、王様? こういうのはレムの趣味なのか、彼の国の文学形態の一つなのか…。まぁ、海外SFではたまに見かけるけどね。

スポンサーから一言 (創元SF文庫)

作品の短さといい、話の捻り方といい、まさに『アメリカの星新一』である。まぁ、こちらのほうが先駆者らしいと焼豚氏は言っていたが。
ずいぶん昔の作品なので、正直なところ話の展開に目新しさなどほとんど無いのだが、それでも個人的には結構面白いと思う。
ただ、翻訳版の表題作である『スポンサーから一言』は微妙。私の意見としては明らかに捻りが足りない…、というか落ちがないぞ、この話。これよりなら、原語版の表題作『HONEYMOON IN HELL』のほうが面白いと思うが、どうか。

天涯の砦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

天涯の砦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

『機械関連の薀蓄が全く物語から浮かない技術は、円熟の域に達していると思う。』という感想があったが、全く持ってその通りだと思う。というか、指摘されるまで薀蓄があったことにすら気づいていなかった。素晴らしい。
ちなみに、この作品は主題は人間ドラマであってSFではないらしい。確かにこれまでの作品と一味違って皆それなりに人間臭い。ただ、そこはやはり小川作品、追い詰められた人間は自制が効かなくなるくせに、さらに追い詰めると改心するのであった。なんだそれは。・・・でも小川はそれでいいんです、『性善説』万歳。