■
宇宙創世記ロボットの旅 (ハヤカワ文庫 SF 203)
主人公を固定した短編集。なかなか面白かった。機械工学や量子論、ラプラスの悪魔などの理論を暴走気味に解釈したものなのだろう。基本は科学、でもエセ科学。
読んでいて少々気になったのは、まるで誉め言葉であるかのように貶し言葉が用いられていること。出てくる王様の名前が酷いことひどいこと。醜悪王とか呼ばれて嬉しいんですか、王様? こういうのはレムの趣味なのか、彼の国の文学形態の一つなのか…。まぁ、海外SFではたまに見かけるけどね。
スポンサーから一言 (創元SF文庫)
作品の短さといい、話の捻り方といい、まさに『アメリカの星新一』である。まぁ、こちらのほうが先駆者らしいと焼豚氏は言っていたが。
ずいぶん昔の作品なので、正直なところ話の展開に目新しさなどほとんど無いのだが、それでも個人的には結構面白いと思う。
ただ、翻訳版の表題作である『スポンサーから一言』は微妙。私の意見としては明らかに捻りが足りない…、というか落ちがないぞ、この話。これよりなら、原語版の表題作『HONEYMOON IN HELL』のほうが面白いと思うが、どうか。
- 作者: 小川一水
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/08
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 102回
- この商品を含むブログ (102件) を見る
- 作者: 小川一水
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/08
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 102回
- この商品を含むブログ (102件) を見る
『機械関連の薀蓄が全く物語から浮かない技術は、円熟の域に達していると思う。』という感想があったが、全く持ってその通りだと思う。というか、指摘されるまで薀蓄があったことにすら気づいていなかった。素晴らしい。
ちなみに、この作品は主題は人間ドラマであってSFではないらしい。確かにこれまでの作品と一味違って皆それなりに人間臭い。ただ、そこはやはり小川作品、追い詰められた人間は自制が効かなくなるくせに、さらに追い詰めると改心するのであった。なんだそれは。・・・でも小川はそれでいいんです、『性善説』万歳。