杜の都のSF研日記(アーカイブ)

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銀の弦

銀の弦

セコマ氏お薦めの一作。そんな彼に、作中の二重性は間違ってないか? と意見したところ「くだらないことを気にするな」と怒られた。すみません。いや、そもそも私は量子力学の評価はCだったので自信はないんだが。
セコマ氏が薦めるだけあって全体的に面白い。とある模様を用いた暗示や、三次元を視覚で捉えるということについて、また題名になっている銀の弦の考え方や表現法など。加えて物語の前半部の展開も良い・・・のだが、後半の平行世界を股にかける視点の移動がどっかで見たことあるし*1、なにより物語としては上手く収束していない。いや、SFとしては収束してるんだが、私は物語としてまとまってないSFは好みじゃないし・・・。という訳でここだけ減点対象だが、それでも確かに面白かった。なんか本物のSFファンは物語としての整合性はあまり気にしないという(うちの部における)習性を考えると、セコマ氏が期待していた去年のSFランキング1位は無謀だとしても、5位くらいになら十分に入っていい作品だったと思う。

涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)

セコマ氏曰く、今回のハルヒのもとネタは銀の弦だ、とのこと。
確かに、平行世界を扱ったあたりからそれっぽい。なるほどなぁと思いつつ、こうも考える。でも、このネタはSFでは昔からありそうだよね、と。

大学生に薦めたい、これから研究室に入ることを躊躇わせてくれる一冊。
学生はここまで忙しくないと(信じている/信じたい)。

*1:セコマ曰く、『果てしなき流れの果てに』のオマージュらしい