杜の都のSF研日記(アーカイブ)

旧「杜の都のSF研日記」http://d.hatena.ne.jp/sftonnpei/ 内容を保管しております

スタニスワフ・レム「エデン」

エデン (ハヤカワ文庫SF)

エデン (ハヤカワ文庫SF)

「複体生物 肉体労働 ノー。ストップ。電気器官 労働 イエス しかし加速退縮 退化
 ノー 濫用 ストップ。南 それは 自動制御プロクルステス理論の事例 ストップ。
 生物社会学的短絡 反死 ストップ。社会的隔離 力ではない 強制ではない ストップ。
 自由意志 ストップ。集団の微適応 中心自己持続 生産 イエス ノー ストップ。」

紀伊国屋書店の力で復刊したレムによる「認識」三部作。話としてはソラリスよりも砂漠の惑星寄り。
進歩が政治的動きによりゆがめられ、種としても袋小路に入ってしまったエデン人の描かれ方は
かなり独特。二作と違い、最後にエデン人と直接的コンタクトがコンピュータを通して行われるのだが
それまでちょっと長いのが難点。
劇中では「プロクルステスの寝床」の故事が二重の意味で使用されている。
ひとつはエデン人自身のとったあまり冴えてないやり方、そしてそれを知った人間たちが
それに介入しようとすることへの姿勢。前読んだストルガツキーの「収容所惑星」
http://d.hatena.ne.jp/sftonnpei/20071107#1194449186 にも
考え方は似ている。ただし互いを役職で呼び合う登場人物たちの観察姿勢はレムならではの
理学的考察が光っている。宇宙船が古いのはお約束なので突っ込まないように。


ちなみに今後ハヤカワのほうでも「虎よ、虎よ!」の復刊が控えている!
表紙もマルドゥックの人なので期待。入手困難だっただけにこれで部会もできそうだ