杜の都のSF研日記(アーカイブ)

旧「杜の都のSF研日記」http://d.hatena.ne.jp/sftonnpei/ 内容を保管しております

 「地球の静止する日」&ミニミニSF短編劇場

ちょっと前からリメイクラッシュのなかでこんなものを引っ張ってくるとは
というわけでキアヌ主演の最新作公開が控える旧「地球の静止する日

ハイローミックスならぬオールドニューミックスでバランス良く読んでいきたいということで引っ張り出してきた新刊&ちょっと前に出たもの2冊。

地球の静止する日―SF映画原作傑作選 (創元SF文庫)

地球の静止する日―SF映画原作傑作選 (創元SF文庫)

最初に出た創元のほう。おもに60年代の映像作品の(似ても似つかないものも含む)知られざる原作を収録する。映像化のされ方、というのも楽しみ方の中に入っているのでどちらかというとすでに濃ゆい物を読んでいる人向き。資料的価値なら「『月世界征服』&撮影始末記録」、読みごたえなら「殺人ブルドーザー」と「ロト」といったところ。「趣味の問題」と「擬態」なんてどうやって脚色したか想像がつかんぞ!どっちも虫(蟲)ネタなので解説も含めて苦手な人は気をつけるべき。
地球の静止する日 (角川文庫)

地球の静止する日 (角川文庫)

こちらは新作映画関連二本と、おもに「アウターリミッツ」系の作品を集めた作品集。こちらは有名なブラウン「闘技場」を含み、かなりセレクトがまっとうなのでこれからSFを読んでいきたい人にはおすすめ。
ターミネーター」とプロットが似ていたため、訴訟問題となって結局クレジット入りを果たしたハーラン・エリスン作品「38世紀から来た兵士」が収録される。せっかくなのでもう一つの「ガラスの手を持つ男*1のほうも入れてほしかった。今は無理なのだろうか?ジェリィ・ソールの短編二つなんてものも含まれるがこれはなかなか珍しい。そのうちのひとつ「アンテオン遊星」は藤子・F・不二雄でも同じネタがあった気がする。


ちなみに角川のほうは01年ごろの「悪魔とダニエル・ウェブスター」リメイク企画に乗っかって進んでいた話が映画の製作中止でいったんお蔵入りになり、その後「デスレース」&「静止する日」のダブル企画で復活した ということだとか。こちらは「悪魔の金」として一回映画化されたことはあるらしい
http://search.varietyjapan.com/moviedb/cinema_282.html
貧しさのあまり悪魔と契約したため、生活水準が一気に向上した元農夫。ただし困ったことに「契約期限」が来てしまったので、考えあぐねた彼は弁護士に救済を求める!といういろいろな意味で訴訟社会アメリカらしいぶっ飛んだストーリー。アメリカでは弁護士は悪魔より偉いのか*2!!
原作者:スティーヴン・ヴィンセント・ベネーについてはこちらを。
http://homepage1.nifty.com/ta/sfb/benet.htm


SFは短編の文学だという人もいるぐらい短編SFは星の数ほど書かれていて、その中から映画監督や脚本家は将来を見越して映画化権を買っていくのだという。クラークもいくつかの短編集で買われたけど音沙汰ない作品*3についてボヤいていた。さて、そういった作品は忘れ去られるのか?それともいつの日か浮上してスクリーンで見ることができるのか?


・・・だから「極北のハンター」はまだかと聞いてるんだ!
他にもあるけどな。いろいろと。日本においては原作の「青田刈り」って少ない?


おっと、肝心の「静止する日」こと「主人との告別」に触れていなかった。創元版を読むと、映画での脚色にどういう経緯があったかがよく分かるので、「こんなままで映画化できねーだろ!!!」という不満はないだろう。角川版では最後の一文に原文が振られている。「アイ・アム・レジェンド」新版もそうだったが、短い作品の最後の一文での原文のニュアンスはシンプルなだけに確かに日本語にしにくい。ここは翻訳家は皆悩むのだろうな。

*1:未来から送られてきた記憶喪失の男、コンピューターの内蔵されたガラスの左手、彼を狙う宇宙人。突如として未来世界から姿を消した人類。人類の運命は男に託されていた…

*2:某米映画より。「ニューヨークで弁護士が1000人死んだ」「いいニュースだ」

*3:例の神の名前の話 どうやって映像化するのか見当もつかないのだが