グレッグ・イーガン 「TAP」
- 作者: グレッグイーガン,山岸真
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2008/12/02
- メディア: 単行本
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「宇宙航行の第一法則を知らんのか!十七次元ハイパー幾何学の方程式を解くようコンピュータに命じたりしたら……融通がきかなくて、決定論的で、線形なコンピュータの精神は、ブラックホールに落ちたダイヤモンドのように砕け散るんだ!N空間の不安定な量子揺らぎを航行し、あの遭難した艦隊を救出するのに必要な直観的スキルを会得する望みがあるのは、カラテの七段黒帯を持ち、自らの脚を体から切断できるほどの自己鍛錬を積んだ、双子のテレパシスト仏教徒尼僧だけなのだ!」
…あんたどこのアニメ見てるんだ。というか、本編はこんな話じゃないぞ。お間違いなく。
イーガンがモダンホラーを書くとは意外だったりと色々「異色」な短編集。異形が自分の誕生を語る「悪魔の移住」はなんだかティプトリー調。「ユージーン」みたいなテクノロジーの生み出す悪趣味な結論をオブラートなしに描いちゃうあたり、「銀炎」のような宗教的価値観とテクノロジーみたいな部分はいつもらしいですな。「新・口笛テスト」は白鹿亭奇譚にも似た題材*1があったか。
表題作「TAP」は言語感覚がもたらす認識変化が最終的には出てくるが、イーガンなら中編クラスに改編しそうな気もする。でもあんまりメタ小説的段階までは手を出さないか?装着者の認識が変化するだけで順列都市クラスのガジェットがない限り「現実」は改編できないし。
…いや、本当にそうだろうか。奴なら何かやってくれるかもしれない。いずれ。
そういや、「ひとりっ子」では文系を槍玉に挙げていたイーガン、今度は体育会系にご乱心。よっぽど大学時代何かあったんだろうか。それともやっぱりrealな「カラダ」はないのか?(ぇー
*1:「究極の旋律」 例の音楽浴も突き詰めればこの系譜?