杜の都のSF研日記(アーカイブ)

旧「杜の都のSF研日記」http://d.hatena.ne.jp/sftonnpei/ 内容を保管しております

FLY TO THE FUTURE 100年先の未来をつくろう! 東北大学機械系特別シンポジウム 

というわけで特任教授・瀬名秀明プロデュース 東北大学機械系協力による特別講演会のレポ
整理しきれていないのは申し訳ないです。ちなみに翌日は寝過して良さんには会えず。何をするだぁーッ!
以下敬称略

臨時販売ではMSイグルーも置いてあったが流石に金がないぜ・・・
好きなガンダム作品1位2位が0080とIGLOOという自分にとってブッちゃんデザインはたまらん存在だ。 でも置いてあったジャンボグレードがゼータなのはなぜだ?

「ロボット・人間・情報システムの融合創発進化と未来社会」 國吉康夫

通産省による知能ロボット分野におけるアカデミック・ロードマップ作成(以下ARMと省略)
…知能ロボットに関するアカデミック・ロードマップ
http://www.ai-gakkai.or.jp/jsai/activity/rloadmap.html
技術開発の±50年をまとめる
「ロボットはこれから50年で同発達するか」=「あなたは生をかけて何を研究なさるおつもりですか」と同義
ロボチャレンジ30 30の挑戦していってほしい事項
2日の合宿でブレインストーミングしてまとめた
・自律システム知 AIに個として真の自律性を与える
・社会システム知 システムネットワーク&集合知
・人間の拡大 物理的・情報的にロボットと人間が合体


今後必須になって来る要素
・Confort/Safety/Green
・安心安全・耐久性・環境性
今後の具体的目標
・ペタフロップスのまたその先を目指して(エクサフロップス?)
浮動小数点演算を1秒間に1000兆回行うことを1PFLOPS: Peta FLoating Operations Per Second という。ロスアラモス国立研究所で稼働するIBMスパコン RoadRunnerが最近達成。ちなみにCore2Duoの2.6GHzで約15GFLOPSだから目標値は実に9ケタ上。
・楽観的観測では25年後に量子計算が実用化 疑問の声多 
完成すれば太陽系単位での量子ネットワークも可能か?
ユビキタスロボット社会 情報世界と物理世界が融合
・自己再構築ロボ 生体ロボ(ウェットウェア)
・シミュレーションの「実体化」
全人間シミュレーション(人間の全モデル化 循環器〜細胞単位?)が可能になれば、完成したモデルを並列に走らせながら同一人物が芸術家やスポーツ選手などになった人生をシミュレートできる
→セカンドならぬ「パラレルライフ」の完成
・スーパーヒューマノイド(人間と同じ大きさながら体力的に人間を大きく上回るロボット)
・ホメオスタティックロボット(自分で正確性をチェックし、価値判断のうえで自分で適合性を上げる)
・必要なのは気象予測のような「精度」ではなく、意思表示としてのシナリオ掲示

瀬名秀明×出渕裕アカルイミライ

タイトルは黒沢清氏の映画から ←明るい映画じゃないじゃんと突っ込み それも当然考慮に入れている
・工業デザイン 1ミリでも変えられたら許さん!的  HRP-2プロメテでの話
メカデザイナー=今回の立場的には「スタイリスト」に近い
・耳のアンテナ「あんなのは飾りです。偉い人にはそれが分からんのです」(ぇー
初期デザインではやっぱり非対称だったようだ。倒れると長いせいか毎回壊れるので雨・土などに耐えられる全領域対応型のHRP-3ではアンテナはオミットされた
・フィクションからリアルに移動したことでの実感
出渕:フィクションは嘘だという心構えがある
リアリティの出し方
瀬名:「DNA解析を一晩で終えてしまう」とかやるのはダメ 架空の実験でも時間経過はリアルさの命
つまり「ジェバンニが一晩でやってくれました」みたいなものはSF的には×ということ(何)
・内山研に女子高生が遊びに来た時はアンテナがサメの背びれみたい ということで「シャッキー」というあだ名が付けられた。その後川田重工の計らいで専用ポーズも完成

\○
  ○\ シャッキーン
 < \

どう見てもアクアビットマン*1です 本当にありがとうございました
・研究者世代
横山&手塚、つまり「鉄人&アトム」→「パトレイバー」→「エヴァ」→今なら「ハルヒ」(!!!!)
瀬名先生ご乱心。研究室に入ってくるなり「普通のロボット作りに興味はありません」と来て、作りたいロボットが長門有希なんだな!エヴァと同じくウェットウェアのようなものではあるのだが。
・未来像=「70年万博」? ちょうど某漫画も人気なところ
出渕:フランス館の映像投影技術etc
空間としての未来が強烈 つくば博はパビリオン外見は無頓着だった
冷戦期の「国威発揚」から来る外観・内部両面の未来像
・ロボものだからこそできること
異人種・差別の問題など ロボを媒介として
出渕:いつかAI系ロボもやりたいかも サイボーグ系は昔からありすぎるか?
・瀬名:出渕ロボのラインは優しい*2
ロボ=男性 ではない そもそもロボには性がない
・HRP-2デザインを依頼された時、最初は流石に遠慮して設計図段階では穴一つ空けなかった。ところが通気口がどうやら必要なことが分かり、川田重工の人が開けるならアレだろうということで本人も思ってもみない形でリアル「ブチ穴」を開けられてしまった。

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. . .

ブチ穴は「間が持つ」とのこと
・人間が作った最初の「ヒトガタ」をしたもの 根源的なもの=土偶とか
ラーゼフォンのドーレム
・瀬名:女性が作るロボはやはり違う 実際「知能ロボットコンテスト」ではリボンを巻かれたり透明アクリル板で作られていたりする
女性デザインロボも登場する?プリキュアとか? (どうやらレイアースは知らないらしい ってどうでもいいがな)
・秀明の「明」=生年が「明治百年」から
・瀬名:科学と芸術はらせんの如くたがいに影響しあう関係
出渕:フィクションは「フラッグ」を立てておく役割→間違っていることもある そのときはまた新しいものを立てればいい
10年前ぐらいは「日本のSFはもう終わりましたよ」なんて言われたもんだが今こそ!

「心が動く 人とロボットの将来」 内山勝

HRP-2プロメテを保有する東北大ロボ研究の最先端
・ロボ= センサ⇔知能⇔アクチュエータ RT(ロボットテクノロジー)移動体
・6自由度ハブティックインターフェイス
現実と情報のフィードバックが可能→脳外科手術シミュレーター
・空手割り運動
愛知万博でもHRP-2プロメテで空手割りをやらせる予定だったが、割れた後飛ぶのが危ないという理由で和太鼓演奏に変更となった(小学生満足度ランキングNo.1)
空手割り・和太鼓演奏は全身運動。叩いた反動を全身でしっかり受け止めてフィードバック制御する必要あり
・飛行ロボット研究
8の字運動はもとより通常のラジコン飛行機でホバリングしながら特定個所を巡回(ヘリではない)
・たとえ100年後でも「動きあるところ機械工学あり」

「バイオエンジニアリングの未来 予測できる将来と想像もつかない未来」 山口隆

医師から工業分野へ ちょっと風邪気味?
・「自分は未来を悲観的にしか見れない」
2001年宇宙の旅だってパンナム倒産を予見してないじゃん
将来=将に来んとす
未来=未だ来ず
幸田露伴 『番茶會談』 『実業少年』という青年向けビジネス誌(!)に連載した多数の未来予測

「飛行機を手取りにする法」 空中にネットを張れば飛行機などおそるるに足らずということらしい。閉塞気球かエリア88の「牙を出せ!」か?
「常燈(24時間)銀行」→ATM 「東京大阪間を4時間で結ぶ」→新幹線といった実現したもの
「電力の無線伝送」「警察が盗難保険を運用」といったものも 幸田露伴が電信技士だったのも影響しているらしい
・予想は難しい
ラザフォードは原子力の実用化は無理といった
サイエンス・インポッシブル SF世界は実現可能か

サイエンス・インポッシブル SF世界は実現可能か

生体関連も困難が多い
今世紀で人類は終わる?

今世紀で人類は終わる?

個人単位で破滅を起こせる時代の到来?

・いくらいろいろなことが分かっていても「生命の原理」の根本は不明
・皆「ミクロの決死圏」の影響を受けている
地球シミュレーターを借りた赤血球シミュレーションでは実時間で1秒間・1ミリの血管内を16000個の赤血球 が限界だった 本当に全身再現はできるか?
赤血球をもとに変形しながら隙間を抜ける室内用飛行船も研究中

・脳神経系・消化器系・生殖器系はおそらく実現不可
ティッシュエンジニアリングで細胞の薄膜は作れるが、内臓を形作らせることはまだまだ無理
というか血管とか通さなくてはいけないため、実質不可能?
・つまり完全なクローン臓器を作るには「スペアパーツ用人間」を作らねばならない という結論が出てしまう
バイオのもつ「悪夢の未来」

星々の聖典〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

星々の聖典〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

イスラム支配のまま人類が宇宙へ進出したという設定のシリーズのうちの一冊。火星を支配する首長のスペアは一応遊んで暮らせるのだが、「打首の儀式」が来ると読んで字の如く体を交換されてポイ。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

こっちはいろいろと内容に関わるので紹介は控えておく。というかSF大好きと言っていたがセレクトがまた渋い 普通の人なら映画『アイランド』を引っ張って来るところだよな

Intermission 休憩

コーヒータイム HALの登場もお馴染みになりましたね

「ものづくりの未来 バイオケミカルマシンの可能性」 西澤松彦

瀬名先生とはミトコンドリア以来のお付き合い
内山研の発表を聞いて「俺のところが作ってる細胞ロボットってロボじゃないのか?」
知能がなくてセンサとアクチュエータしかない
・バイオケミカルマシンの開発→自己組織化

プレイ―獲物〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

プレイ―獲物〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

これも大腸菌ナノマシンのハイブリッド 電子部品=ドライ 生体=ウェット
・ウイルスの自己組織化を使ったリチウムイオン電池の高効率化 ウイルスを円筒状に組織化させてイオンを移動させる
・タンパク質=まさしく最強の自己組織化マシン ATP生産効率はほぼ100%で機械ではまねができない
・誘導技術の確立 小型化→小型検査チップによる毒素の検出など
医療現場の人員不足・食の安全問題・NBCテロへの迅速対応が可能になるはず
IPS細胞利用→自己組織で検査可能
・バイオニック発電
生体を利用した電力発生…映画『マトリックス』における人類の役割
最近では電池役に徹しているガンダム乗りもいるとかなんとか(そんな話は出てません!)
燃料電池における白金を酵素へ置き換え→柔軟な反応選択性
血液が使えれば体内に埋め込んでもエネルギーは事実上無限。うまくいけばジュースやどら焼き*3も?
なにより金属部分がないことで安全性・環境性が高い(生体プラスチックならば捨てても土に帰る)
・マシンをよりバイオに、セルをより機械的
生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

38億年の進化と今の技術が結びつけば・・・???

「フィールドロボット/宇宙ロボットの現状と未来」 永谷圭司

かつてのマイクロマウスコンテスト(迷路脱出ロボットレース)がきっかけでロボの道へ
・機能だけなら洗濯機=ロボ ただし産業用ロボは定義済み
筑波大学 油田教授「ロボットとは実現したとたんにロボットで無くなる夢の機械のこと」
・基本原則
「物理法則を破らない」「非現実的ブレイクスルーは考えない」
・先日JAXAは「いぶき」とともに打ち上げに成功した東北大学発のスプライト観測衛星「雷神」
ちなみに打ち上げ費用はタダだが衛星費用は学生さんタダ働きの人件費除いて1.5億円
・レスキューロボの活動目的は震災から「NBCテロ対策」へ
地下鉄サリンでも助けに行ってガスを吸った人がいることを考えると重要。ただ高価なくせに非常時しか使わない、というのがネック
・ブレイクスルーはタダでは起こらぬ!
「○○したい」+コスト+スケールで未来が実現する

「飛行機は100年後飛んでいるか?」 河内俊憲

スクラムエンジン研究の一人者
・これからの航空機開発
高効率化のための大型化・高速化、低Nox化等の低公害化
例:新型超音速機案「MISORA」X-49ナイトレーベンのような複葉翼で発生する衝撃波を打ち消す
・しかし利便性から考えるとどうか?「移動の必要はあるか?」
例:ipod CD買いに行かなくていい PSP 会いに行かなくても皆と遊べる
そのほうがエネルギー消費が少ないかもしれない
・車の燃費を22km/lとすればジェット旅客機は50m/l(そもそも始動時に全部なくなりそうだが…)
・理想情報転送から考えれば、人間一人分の情報だと噂される140TBのデータをアメリカに転送するのに必要なエネルギーは175kJ 約ゆで卵1個分のエネルギー
・一方人一人がエアバスA380で同じ移動をすれば一人頭6GJ 120MJ/kg 
これは毎日メガマックを2〜3個食って2年分に相当する すーぱーさいずみー!!!
・スペースプレーン開発の意義 
そもそも行ったことのない場所には情報を送れない! 行くことそれ自身も重要!
イースター島の住人は移動できずに僻地で自滅している。人類もそうなっちゃダメ
ツィオルコフスキーのゆりかご発言 科学者はいまだにこの男の言葉に踊らされている?
・角田ではRBCC スクラム+ロケットの複合型のテストも行われている
鍵は高速下で火を安定させること・燃料を短時間でうまく混ぜて着火すること

ディスカッション「イマジネーションが光速を超える!」

アラン・ケイ*4 「未来を予測するには未来を作ってしまえ」
・出渕「話からどうもフランケンシュタインを思い起こす」 つぎはぎ有機物ロボット?
 「バックアップデータ」を取り、植物人間になったらインスコし直す…イーガン作品の宝石みたいなものか
・技術の「罪」 例:先の「首移植」は「よい」技術か?
・三原則の実装
 産業ロボットの出力は人間に危険でないよう180W以下
・「〜の三原則」 たとえばハイテク兵器の三原則はない
人間→民間人、ロボット→自衛官で「自衛隊の三原則」になる
アシモフの言葉「三原則=『よき』人間の行動規範の基礎」
→人間だって三原則を守りきれない
ロボットは違反行動を起こしたら壊れる 人間も「よいひと」であれば壊れてしまうかもしれない
國吉教授も「ダニール」というロボットの作成を担当したことあり
・危害の範囲ってなんだ?人間ってなんだ→フレーム問題 広すぎる

・体と言葉のネットワーク プログラム不要 
例:気分とお腹

・『われはロボット』の流れは二つ
安楽椅子探偵のごとく地球から動かないスーザン・キャルヴィン女史(ロボット心理学者)と宇宙の現場でロボットに振り回される技術屋コンビ ドノヴァン&パウエル
話によってはロボットの宗教に振り回されたり「殺されたり」するから苦労人だよなぁ奴ら

・高度な知能で心はいらない?
自動制御≠自律≒知能?
・知能ってなんだ?
…知能=行動をdefineしていくもの optimization(最適化) 物理的にも
受動歩行:passive walk(Tad McGeer ら)の論文の与えた衝撃 適用的
どこかで斬る必要がないか?
…「環境に対応して」目的をcompleteする能力
新しい生態は新しい知能を生むか? 例:神経細胞をもっとデカく培養したら
→定義問題 「人間の定義」も関わる
知能がない人間は人間じゃない!となるのはおかしい→バリエーション
想像することだけは可能
・必要なのは目標を作る能力 自制?自律?
人間も変わるかもしれない 
・瀬名「社会・倫理が変わっちゃうことを描くのはSFは得意だが変わっていく過程を描くのはSFは苦手 長いスパンでだがこれまでのものをもとに『技術とともに変わっていく』SFを書きたいと思う」


最後にサイエンスイ・イマジネーションにご両人にサインをもらいました。感謝感謝
長いプロジェクトのまとめにふさわしい濃い時間だったと思います。これぞ本領発揮といったところ。時間は押してましたがもっとラストのディスカッションの時間が取れれば。各教授も自分の分担の時より力があったように感じたので。まぁ逆に言うとラストで皆フリーダムすぎるだろうという感じも。話のかじ取りは大変でしたね。


さて、自分の課題に戻りますか…
(ちゃあしう)

*1:アーマードコア4ネタ 変態企業アクアビット製パーツだけで構成した超アンバランス機体のこと

*2:自分はマッシブルだと思ってる ケンプファーとか

*3:ドラえもんのエネルギー源はあらゆる食物だが、これは体内の特殊原子炉でなんでもエネルギーに変換できるため

*4:GUI搭載のパーソナル情報端末「ダイナブック」発案