アラン・ムーア&デイブ・ギボンズ「ウォッチメン」
WATCHMEN ウォッチメン(ケース付) (ShoPro Books)
- 作者: アラン・ムーア,デイブ・ギボンズ,石川裕人,秋友克也,沖恭一郎,海法紀光
- 出版社/メーカー: 小学館集英社プロダクション
- 発売日: 2009/02/28
- メディア: 単行本
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恐らく、世界は誰かの手で
作られるような物ではない。
何物も作られることはない。
ただそこにあるだけだ。
そこにあり、あり続ける…職人の手を経ずにに存在する時計だ
ヒーローのいる世界、それにより変わってしまったパラレルワールドとしてのアメリカの政治・社会そしてポップカルチャー。条例により活動を規制されたかつての覆面ヒーローたちのその後を辿りながら、やがてジョークですらない皮肉な世界の現実を我々は知る。アメコミ唯一のヒューゴー賞受賞作品にして今季映画化作品。日本ではマイナーになってしまうところが悲しい…
自分は時代の道化だと自嘲しながら己が欲望を満たすための暴力を重ね、政府の仕事*1を引き受けることで条例を免除されたコメディアン、時空を超越し、もはや人間的観念を持たないヴォネガット作品的な本世界唯一の超人Dr.マンハッタン、狂気の世界を善悪に二分することでしか受け入れられないただ一人の条例破りの処刑人ロールシャッハ、財力から憧れのヒーロー二代目を継いだものの条例で引退し人生にやりがいを見つけられないナイトオウル二世、… ヒーローもまたひとりの人間であるがゆえに(もしくは「人間で無くなってしまったが故に」)悩み続ける。
善良な市民が「ある日突然ヒーローになってしまう」とはちょっと違う、ある日自主的に正義のために戦おうと考えた人々によるアメリカン「自警」ヒーローの発生についても、副読本的な劇中資料で丁寧に説明されるので億劫がらずに読むべし。このへんが日本的ヒーローとの大きな違いだろう。あまり「因縁」だの「復讐」だのにこだわっていないのは興味深い。
究極のヒーローとは何か?そこに真の平和は生まれるかという根源的問題にまっすぐ取り組んでいる本作品。ある人物が達した「最終結論」はあまりに有名になりすぎたネタではあるが、元ネタの一つとして有名なTVドラマはちゃんと「劇中劇」というかたちで最後のほうに登場するのでそこは許してやってくれい
予告編じゃ暗すぎてイメージわかないという人はこれを見てみるとよい。カートゥーン風ウォッチメン
・・・残念でした あなた騙されたのよぉ!!!!
ニコニコに転載されたVer(http://www.nicovideo.jp/watch/sm6366233)では歌詞翻訳等もあるがネタ解説もそれなりにあるのでこちらを見る人間は自己責任で。
映画で、いかに「ありえたかもしない80年代」を再現してくれるか非常に楽しみである。まぁ映画がどうあれ原作本はおそらく今しか手に入らない。急げ!すでに某所では高騰が始まっているぞ!
*1:ずばり共産主義打倒・革新派勢力の排除 本世界ではウォーターゲート事件すら彼の手で握りつぶされている