ナンシー・クレス「プロバビリティ・スペース」
- 作者: ナンシー・クレス,Stephan Martiniere,金子司
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/01/09
- メディア: 文庫
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登場する艦の名前がなぜか「ムサラキ」。『ムーン』では「ゼウス*1」、『サン』では「アラン・B・シェパード*2」。ムラサキの元ネタはなんだ?紫式部?
あれ?世界は?というわけで「共有現実」を失った世界は完全にメインから外れ、登場シーンは少ない。
ということもあってメインは古代異星人の人工物という切り札で力を誇示する軍事政権のクーデター、世界を目指す元探査隊メンバの模索と小娘の逃避行という3つの流れになる。濃ゆい新人物や新たな理論、ハッタリをかましあう人類とフォーラーの戦略とヘタすると宇宙そのものが終わりかねない大理論、そしてクーデターの行く末。戦争ものとしては平均以上に色々やってて一応の区切りはつくけれども、世界が忘れられてるせいでなんだかイマイチな印象がある。というか共有現実ってフォーラーとコンタクトとか太陽系内で発動とかそういうのに使うのじゃないのかよ!
というか逃亡少女の視点、本当に必要だったんだろうか。
結論
「ムーン」+「サン」−対フォーラー戦争=良作
「サン」+「スペース」−世界=まぁ戦争物としては普通
というぐらい。ヘタにスケールでかくしなくていいのにという感想を持った。その一方で「結論ありきで話書けない」という著者の気持ちが分からなくもある。うーん。これって感性の違いなんだろうか。異種族とのガチバトルはここ最近流行だが、せっかく差をつけられるはずの部分(共有現実)をおろそかにしてしまうのはよくないとは個人的に思う。
個々のアイデアが面白い人という印象を受けるので短編集のほうも読んでみることにする
・気になること
「飛行艇」と毎回使ってるけど「水上にも降りられる小型宇宙機/軌道往還機」という解釈でいいのか?調べてみると原文でも「Flying Boat」らしいので忠実といえば忠実だが。「エイリアン」的にはドロップシップ、Halo的にはペリカン*3?