杜の都のSF研日記(アーカイブ)

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日下部匡俊「ゼーガペイン 忘却の女王」

ゼーガペイン 忘却の女王 (朝日ノベルズ)

ゼーガペイン 忘却の女王 (朝日ノベルズ)

『これがガルダというなら、わたしはアンチゼーガがアルティールであると主張されても信じる気になるが。』

今年の(日本のごく一部の人間の)夏がゼーガ色だった原因の一つ。SF設定を担当した日下部匡俊による新作長編。主人公、クロウは留学先の「一日」が偽りであることに気がつく。彼はある量子サーバー唯一の「真人間」だったのだ。そしてサルベージされた彼は自分の置かれている状況を認知する間もなく、人類を滅ぼした宿敵ガルズオルムとの戦いへと巻き込まれていく。周りの人間からは役立たずな雰囲気をかもし出されて立場の無いクロウ。だが、罠にかかって身動きとれない彼の前に一人の少女が現れる。
本編でもクリスが出向してきたりクロシオがガンナー時代に逆に出向してたり最後のサバト攻略戦でオケアノス直衛を担当したりと何かと出番があったオケアノス級ドヴァールカー。ガンナーのトガについてはXBOX360ZEGAPAIN XOR&NOTが詳しいようだが未プレイ。そもそもゼーガはメディアミックスだったんだよなー。肝心のゲームがANUBIS並みだったなら、なんて贅沢は今さら言えんか。箱もあることなのでいずれ探してみよう。コミックだと帰還までQLが持たないのであっさり回収あきらめて後で「復元」待ちなんて描写もある。お前ら一回アークと同じレベルまでダメージが進行してみろ!!そんなセリフは二度と言えなくなるぜ!!!

ゼーガペイン XOR - Xbox360

ゼーガペイン XOR - Xbox360

本編で触れられなかった敵側の親玉にしてIAL社で初の量子サーバーを起動したナーガとその周りに迫る作品。思えば量子サーバーを作った目的も、「内部で時間を加速して人類を進化させる」だったわけだが、その過程では大量の「試作品」が作られては消去されていたに違いない*1。また「何故サーバー内では記憶が操作されているのか」等に関しても「順列都市」ばりの考察が種々加えられている。比較してみるのも一考。ただ、本編でも最後に出てきたゆえにさらっと流された「ナーガが無痛症だった」はもうちょっと突っ込んでほしかったか。
クロウはキョウと違って引っ込み思案なのでバカやって互いにぶつかり合って問題解消とはいかないのだが、最後にはこれまでの鬱憤を吹き飛ばすガルダ無双が展開される。本編で卑怯臭いほど強かったアンチゼーガ+いくら死んでも再生する復元者の組み合わせに「苦痛」まで与える強さ。このへんは本編(前半)以上に躍動感あるといってもいいかもしれない。
巻末の対談ではいわゆる「6話まで云々」という自覚話や在り得たかもしれない色々な構想を語ってて、今となっては実現する可能性がほぼないが故に知ってうれしい分悲しくもある。ずばり「ディアスポラ」になった可能性もあったのだな。


そういえばBD化投票は締めきったようで。応援はしたいんだが、自分の財布とは相談しても難しいのがどうも。財布の中身も積層化技術でどうにかなりませんかシマ司令(何を言っているんだ君は)
(ちゃあしう)

*1:そのつながりで我らが先輩ことイェルも登場