杜の都のSF研日記(アーカイブ)

旧「杜の都のSF研日記」http://d.hatena.ne.jp/sftonnpei/ 内容を保管しております

早川書房編集部「神林長平トリビュート」

「方程式は死なないだろう」地球から離れてここまでやってきておいて、同僚は言う。
「比喩だよ」
「出来が悪い」
「それは認める」

神林長平トリビュート

神林長平トリビュート

序文を読むとやはり氏もそろそろ先を考えてしまうお歳か…とちょっぴり不安もある。
猫出して登場人物に「フム」ではなく「フムン」と言わせれば神林長平、なんてことはなくちゃんと前者も後者も無い作品があるのでご心配なく(誰だよそんな心配をする奴)。『完璧な涙』や『敵は海賊*1みたいな繋がりを結構感じる作品と、『七胴落とし』『我語りて世界あり』のような独自方向の作品に走ってる作品と二種類ある。
ほとんどの作品で読んでると「神林感」を感じてしまうのはやはり刷り込みなのか。細かいネタも神林仕込み。個人的な好みはベタではあるが一番最初『狐と踊れ』と巻末『言葉使い師』。前者は本編と逆で「臓物」が主人公、後者は言葉の魔力をさらに突き詰めた方向に進んでいる。『魂の駆動体』もあんまりSFしてないが本編の老人たちの苦闘を思い出して微笑ましい。
Enjoe氏の『死して咲く花、実のある夢』は氏の中では分かりやすい作品になっているような気もする。原作で無理矢理3匹にしていてあまり意識されないアレを2匹に戻しているのはまぁ「元の方程式」に忠実ではあるか。
雪風火星三部作はちょっと題材がはっきりし過ぎているゆえに誰も挑戦しなかったか。最近書いてないアイツに後者を書かせてアニにアレが登場した責任を取らせるとか。いえ、何でもないです。伊藤計劃氏の『過負荷都市』は残念ですのぅ。
戦闘妖精・雪風解析マニュアル

戦闘妖精・雪風解析マニュアル

氏の作品全般についてはこれが詳しいかな。いまならほとんどの作品が(表紙はラノベ調)手に入る。

*1:主人公の正体は中盤ぐらいであっさり分かる。まぁ元の候補が少ない+シリーズ一作限りの敵は出せんか。