杜の都のSF研日記(アーカイブ)

旧「杜の都のSF研日記」http://d.hatena.ne.jp/sftonnpei/ 内容を保管しております

鳥の歌は永遠に レビュー「トリノホシ 〜Aerial Planet〜」

注目してたSFサバイバル&フライトゲーム。近所じゃ予約できずけっきょくkonozamaだ!といってもしばらくA.C.E2&3で大量破壊兵器をぶん回すのに夢中で積んでいた。すまんよカール。

ストーリーは前回http://d.hatena.ne.jp/sftonnpei/20070728#1185640997 ってかなり前か すこし触れたとおり。研究に没頭し、少し疎遠になってしまった年頃の息子を連れて白鳥座α・デネブの裏にあるコニウス系の生命あふれる第二惑星コニウス・ブルーへと向かっていた異星生物博士の乗る宇宙船に事故が発生。博士は息子を脱出ポッドで脱出させ消息を絶つ。脱出ポッドは表面の98%が海という水惑星のしかも唯一の観測基地のちょうど反対側へ落下してしまう。唯一の宇宙船を失い、人員も少ない調査隊にとても救助を回す余力はなく、我らがプレーヤーの分身ヒューゴー君は脱出ポッドに偶然乗っていた親父のフィールドワーク用単座グライダーで自力での基地到達をめざすことになる。しかし島の数は非常に少なく、あてずっぽで飛び出せばおそらく海上で餓死か衰弱死が待っている。そこで重要となるのが親父が調べていたこの星の「鳥」の生態だった・・・
(注意:本項目は多数の画像を含んで重いです というかやっぱ多すぎた 汎性反省)
 
ゲームの流れは与えられた課題をクリアしていくクエスト式。次の島に行くための条件を満たすことで自動的に次の島に続く。たいていの場合次の島に行く渡り鳥を探し出し、その「友好」の声を録音。これを群れに向かって再生することで仲間にして、彼らについていくという形になる。それ以外にも自由挑戦のクエストがいろいろ。島では高度維持程度の出力しかないがいちおうエンジン付きのグライダーで移動し、数箇所ある着陸可能地点でキャンプを張って食料調達や休息を行う。

鳥にもいろんな種類が存在し、植生や生息地もさまざま。共生関係を結んだ二種類セットのものもある。中には見栄えなく襲ってくる肉食種もあり、自分で作っていく図鑑にしっかり分かりやすい名前で記載しておきたいところ(上の画像でも名前は自分で設定したもの センスがないのは私の仕様です)。特殊な機能を持つ鳥もあり、上昇気流からメシの確保、さらには襲撃される主人公の身代わり(?!)までいろんなことで役に立つ。またこの星、月がないため自転は速く、傾きがないので季節もない。そのため島によってその気象条件は刻々と変わる。赤道下での突発的スコールや昼夜での風向きの変化、さらには極地でのブリザードなど時間帯による変化を見極める必要がある。


食料はかの伝説の傭兵の親父と同じく現地調達*1。場合によっては鳥がうまそうに食ってるものを横取りなんてことも。食材も果実・葉・キノコ・魚、果ては昆虫や肉食の鳥が残した他の鳥の腐肉なんてものまである。当然有毒なものも多く、宇宙服の姿勢制御ジェットを簡易に用いた(!)加熱処理や長持ちさせる乾燥処理が長期行軍のために重要になる。毎回手に入る食料は雀の涙だが、ある種の鳥を群れに引き込むと鵜飼いのごとく魚介類を根こそぎゲット、食生活が一気に豪華になるのでお試しあれ。

小川一水的に始まり、基本的にはそんな感じの「厳しい環境における少年の成長譚」という形をとりながらも
「放棄された第一次観測隊基地の捜索」
「3000m級の山々を超え、すわ成層圏かという高度1万m*2を巡航する伝説の渡り鳥」
「強力な『敵』に武器もないのでなすすべもなく空を逃げ回る」
「極地にある観測基地に嵐と壁のような山を突破して自力でたどり着かなければならない」
といった谷甲州作品スピリットあふれるサバイバルが味わえる。というかまさかそうくるとは思わなかった。まったり飛べると思ってたら後半はなかなか大変なことになるので操縦技術の訓練はお忘れなく。しかしそれ以外でも人工知能カール君との軽妙なやり取りや、この星のこれからの運命などSF設定は日本のゲームだとたいてい味付けで終わるのに対してかなり緻密。しいて言えば「竜」に関するアレはもうひとつ何か仕込めたかも。ブリンや星野之宣作品と比較してる人も多いようだ*3

飛行中はシームレスで、キャンプ着陸の切り替えは速いが各ステージ開始前のロードは長い。またセーブロードがキャンプ以外ではできないのは当然なのだが飛行の途中でゲームをやめるコマンドはないため、着陸可能な地点が近くにない場合即リセット*4となるのが玉に瑕。イベントが飛行中いきなり発生すると厄介であるし、ちょっとシステム面で詰めは甘かったかもしれない。あと食事やイベントフラグのハマリには注意。島の始め・終わりのデータは一応とっておくべき。でないとかなり後悔する。


映画「グース」のようにグライダーの周りの鳥の群れが大きくなっていくのを見るとやっぱり心強い何かがあふれてくるものを感じる。一方で島ごとにさまざまな別れもあり、ヒューゴー君の成長を促すことに。「あいつ」(ネタバレを防ぐため名前は伏せる)との別れはマジで泣ける。やってくれるじゃないかコノヤロウ!笑って別れるはずだったのに!


後半から登場するヒロイン・エミリーは異星生まれなので低身長・いろいろあって地球人嫌い・英才教育を受けたバリバリのツンデレ、ただし学者の祖父には顔が上がらないという具合。高機能インプラントの埋め込みの是非*5人工知能エージェントの扱いなどで地球人の主人公とは違うメンタリティを示してくれる。アンタは救助される側なんだから指示に従いなさいよっ!と言いながらも危地に突撃して主人公が助けることしきり。最後の最後(の最後!)までまではらはらさせてくれる。そのスジの人にはたまらん?

デレシーンはご自分でどうぞ。ちなみにルートBで見られます。


題材がハードなため、また慣れるまでが大変なのだが、これは忘れられるには惜しいゲーム。こういうSFマインドあふれるゲームそうないので一味違うものを求めている方はぜひトライしていただきたい。日本のゲームのSF設定はまだまだ捨てたもんじゃないんですぜ。


そうそう、コラボを謳っていた初音ミクの歌はゲーム中は出てこない。でもまぁゲームで詰まったら癒しに聞いてみるのもひとつ。

*1:水はC2Gスーツとまではいかないが着ていた宇宙服でリサイクルなので気にせずともOK

*2:調べてみると地球ならギリギリでここ対流圏。でも上昇気流で上がるわけだから当然か

*3:ずばり知性化シリーズや「2001夜物語」第16夜「鳥の歌いまは絶え」とか

*4:ソフトリセットあり?L1+L2+R1+R2+SELECT+START連打

*5:毒物の分解処理はもとより危険な場合は仮死状態でユーザーを保護する機能まである。ただしガチに改造処理、というイメージがするためか地球人にはウケが悪い