杜の都のSF研日記(アーカイブ)

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無人島博物誌 レビュー「デザーテッドアイランド」

なんとなくトリノホシをやりながら思い出していたのが雰囲気のちょっとだけ似たゲーム、プレイステーション1の「デザーテッドアイランド」。せっかくなのでこの機会に紹介してみよう。

デザーテッド アイランド 新・無人島物語

デザーテッド アイランド 新・無人島物語

デザーテッド(Deserted)は「無人の・放棄された・さびれた」を意味する。なので直訳すれば「無人島」*1となる。新・無人島物語とついているがあんまり関係はないらしい。そもそも自分は旧のほうはよく知らない SFCで一本出ているそうだが。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%89%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89
ウィキペディアの項目がなぜか充実している。こういうソフトのファンが自分以外にも居るというのはうれしいぞ

ストーリーはというと・・・時は明治37年/西暦1904年5月14日。米国所属の貨物船ファッティ・ホエール号が太平洋上で嵐による遭難後これまで知られていない謎の島を偶然発見する。そこにはそれまで知られていなかった未知の生態系が広がっていた。半年後、この島の価値に注目した各大国がその利権と名誉を賭けて調査を開始する、という話。設定されている位置はこの辺り 東経171度52分 北緯11度11分となるとここか
http://maps.google.co.jp/maps?ll=11.1833333333333,171.866666666667
いまだとマーシャル諸島の近く つまり合衆国領?

で、選べる国が4つ。
大英帝国  もちろん、大英帝国の威信をかけて パラメータが最も良い
アメリカ  探究心が全ての原動力。バックはあのスミソニアン
プロシア帝国  帝国の栄光を世界にアピールするいい機会とのこと ドイツの科学は世界一ィィィィ
大日本帝国  (時代が時代なので)陸軍の南方進出のための足がかりの調査のために出発。その名も皇国探検隊。パラメータは精神力だけが高い
から一国選んで無人島の各所を探索,動植物と鉱物を博物誌に,地形を地図に記録していくゲーム。発見した動物・植物・鉱物は博物誌に一ページづつ記録されてゆく。また詳細の分かっていない島の地図を作ることも任務のうち。新発見をすればするほどパラメータを上げることが出来るようになり、探検の能率を上げていく。ちなみに上陸すると,島の名前を自由につけられる。これがセーブの時の名前になる。デフォルトの島の名前はアメリカが「ホープ島」、プロシアが「ゼーレラント島」、イギリスが「ニューワイズ島」、そして日本が「しょううん島」(昌運?)といったぐあい。

チームには各国毎にリーダーの博士(探検隊隊長)、学生(隊長の助手)、医者(もしくは学者)、ポーター(荷物運び)、狩人(もしくは軍人)そして犬(猟犬?日本隊の犬は秋田県だが大菅先生の持ち犬なのか?)で構成されている。ただし人物を切り替えたり人選で頭をひねる必要はなく必要な時に書くキャラが機能を発揮してくれるので,隊長として3Dマップを動きまわって目標を探すだけでよい。視点はFPS系列一人称視点。むしろダンジョンRPGに近いか。


探検を進めるにあたり,活動拠点となるベースキャンプが設営され,いろんな物資が入る。それとは別に探検中メニューを開くことで張る休憩などのための簡易キャンプがあるが、そこまで運べる量はポーターの体力いかんである。アイテムにも各国の特色が反映される。日本のはちまきプロシアの霊子探知機(!)や筋力増幅器*2、イギリスの紅茶セットなどなど。ただし一部を除いて効果は分からない(何)

変な奴(生物・植物・鉱物)を発見すると,いろいろ調べてから博物誌に乗ることになる。しかし博物誌に乗るころには明らかにすぐには分からないようなことまで分かっているのは非常にナゾ。例えば毒性・食性・産卵時の行動とか。


しかし,ここからが本番。2回目に同じ動物に遭遇すると選択肢が出てくる
「捕獲しますか?」
む,さっき捕獲して調べたのではないのか?と思いつつ「はい」を選ぶと…照準が出てきて銃撃!しとめればその場で食べてしまう

明らかに食べたくないような生物でも何故か食すことが出来る,これがこのゲームの「サバイバル」たる由縁。なぜかこの島で生きているいまや伝説のドードー*3 だろうが巨大ゴキブリだろうがかわいいうるる猿であろうが。もちろん,こういうこともある。

食べる前に気付けよな。下手すると全員,食中毒で死亡して探検隊全滅とゆーガッデム!な自体も発生するから注意が必要。必ず解毒剤は持っていくように、と言いたいところだがむしろ、ハンティングはしないほうがいい エンディング時「殺害動物数」がカウントされるので評価が下がるのだ。


もちろん,危険なのは「食す」動物だけではない。次のエリアへ続く要所要所に危険な動物が配置され,そいつを倒せないと先に進めないようになっている場所がある。ここまでにくるまでに戦闘力と体力をあげておかないと山越えすることすらできず,探査2割にも満たずして先に進めなくなるのだ。これはキビシイ
そして,夜。夜は獣の時間とはよく言ったものだが

む・・・

強っ!ちなみにパラメーターをかなり上げた後半にならないとコイツは倒せない、また倒した所で出てこなくならないのでメリットがほとんど無い。時間を無駄にしないため&夜行性動物の探索のために時間は惜しいのだが夜の散策は命懸けである。


さらに探検隊にはさらなる試練が待っている信用度というパラメータがあり,順調に探検が進めば問題はない。しかし,新発見が少ないまま,しかも犬に襲われたりでパラメータが下がっていくと翌朝・・・

え,いなくなったの??どうやら心労がたたってノイローゼ気味だったらしい。いったいどこへ?そしてしばらくすると・・・(実際のムービーは残酷ゆえお見せできません)

というわけで逃げてった隊員が野生動物に食い殺されてゲームオーバー。これは厳しいサバイバル・・・


そんなこんなで厳しい探検だが,この島の生態系は魅力にあふれている。なんか想像の斜め上を行くことで。

ち,ちび黒熊??!!浮遊原理不明*4??!!特殊な擬態能力を持つ生物も多数存在。「ガラパゴスが霞んでみえる」なんて台詞が出てくるのも納得。そしてこれらの生物が同時に存在する理由も分からない。さらにこの島には謎の巨石遺跡が存在し、謎の古代文字もあちこちに見られる。この島にたどり着いたらしい、別の生存者の手記があちこちで発見され、彼もこの島の不思議さを記録している。そして夜になると青く発光する球体が出現!探検隊に立ち去るように言ってくる。この島の秘密は何なのか??!! ちなみに架空生物などの元ネタは「フューチャー・イズ・ワイルド」の前作「アフターマン」やトンデモネタやファンタジーネタなど多彩。もちろんオリジナルなモノも多く、博物誌の写真はそれなりにリアリティを持って写っているのが面白い。なんてったって古生代の生き残りはもちろんのこと、ファンタジー世界や日本の伝説に登場する鉱物、さらにはラピュタ王が喜びそうなアレ*5まであるからな。個人的には直径50cm、史上最大の単細胞生物に一番驚いた。細胞膜の厚さはいくらだよ!


しかしこのゲーム,エンドが数種類あるが,「真のエンディング」をみる方法がなかなか難しい。一説によると納期に間に合わせるため,チェックしないまま出荷されたというのだが。

一番単純なエンディングはゲーム開始直後,メニューを開いて,「帰国」を選べばOK。すると・・・

干されました。まぁどこも調べてませんからなぁ おそらく報告書は白紙?それとも全部言い訳?


それぞれの国による特徴も面白い。隊員たちの軽妙な掛け合いが殺伐とした雰囲気を和ませてくれる。大英帝国は紳士な隊長とその助手、イヤミな医師など。最初は医師が助手をイジめては隊長が抑えているのだが、次第に隊長もワルになってきて… アメリカは絶対そうなるよねーといった感じの定番キャラぞろい。図鑑に載せようというのに「うるるざる」なんて名前をつけてしまう本ゲーム唯一の女性キャラもアメリカ隊。プロシアは全員きまじめであるがそれがまた時折笑いのツボを直撃。Gが苦手の軍人のハインツ君とか。そして日本!時代が時代だけに雰囲気もばっちり。しかも何気に文学性にあふれたメンバーぞろい。おそらく寺田寅彦あたりをモデルにしているかも。あと何気に海外への「進出」を不気味に続ける自分たちの国への不安なんてものもあり、無味乾燥としたサバイバルに華を添えている。

モノがモノだけにやっぱりこちらも敷居が高いソフトだが、こういうものが出ているのも中期PS1のような飽和したソフト市場ならでは、ということだろうか。もちっとテンポよく探索できる無人島サバイバルソフトを期待したい。今の技術ならすごいものができるんじゃないかとひそかに期待してるんだが。

*1:スペランカーだって直訳すれば「洞窟探検家」だそうだ それも「趣味で」潜る人のこと

*2:この時代にパワードスーツがあるとは恐るべし

*3:この世界でもすでに絶滅したという設定である ちゃんと探検隊はそのことを思い出しながらこの島の奇跡に驚くのだが、二回目に出会うとそんなことは忘れたといわんばかりに捕獲の選択肢が出る

*4:この島には揚力に頼って飛ぶようになった「普段は飛ばないはずの種」もいれば、「推進力」や「浮遊力」で飛ぶようになった「普段は揚力で飛ぶはずの種」もいる。後者は特に異様。

*5:ヒヒイロカネオリハルコンミスリル、さらには空に浮く「浮遊石」から、あまりの質量に時空を歪ませている鉱物まである。この島にはマイクロブラックホールまであるのか!!