杜の都のSF研日記(アーカイブ)

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ナンシー・クレス「プロバビリティ・ムーン」

プロバビリティ・ムーン (ハヤカワ文庫 SF ク 13-1)

プロバビリティ・ムーン (ハヤカワ文庫 SF ク 13-1)

「あなた方の花が永遠に咲きこぼれますように!」

謎の異星人が残したスペーストンネルを通じて多数の地球人とよく似たヒューマノイドとのコンタクトに成功した人類だったが、やがて人類を一方的に敵視する異種族フォーラーと接触、戦闘状態に入る。人類はフォーラー対策に奔走する一方で、ヒューマノイド達の調査を進めるのだが。
あんまり帯通りの戦争SFしてない一作目。というか異文明ファーストコンタクトが完全にメイン。それだけだとすればなかなか良くできている
キーワードとなるのが、ワールド人に備わる「共有現実」。住人達は個を持っていると同時に皆と共通の「共有現実」をもち生活している。共有現実がすべての規範であり、なじめない人間は「魂が無い非人間」とみなされて排除される。はてな界隈だと「住人達に強制的に空気を読む能力が備わってて、それがない奴は殺されちゃう世界」と言ってる例がいくつかあった。それが一番イメージしやすいかもしれない。ある日いきなり星の世界からやってきた異邦人に魂があるのか、それは共有現実があるかないかによる。世界人エンリは地球人の住宅にスパイとして潜入させられる。人類とほぼ同じDNA 構造も脳構造も持ってる世界人なんだから「共有現実」の仕組みが分かれば俺たちも「分かりあえる」んじゃね?と気楽に脳の解析を提案する人類と、相手の正体を見究めかねている住人たちの間で疑心暗鬼が続く。それはやがて大問題を引き起こし…


花をこよなく愛し*1、「空気」を気にする中世レベルの異文明のみならず、人間側の探索チームもまた一癖二癖。後半の某人物の暴虐っぷりは流石に目に余るものがあるが、それが結果的に良い方向に働いちゃったりするからまた侮れない。
しかし「プロバビリティ」に到達する第一歩「脳は確率的に動作する」も今ではお馴染みな気がしてしまいますな。量子脳仮説ってそう普及してるっけ?あとイメージしにくいのが世界人の「首毛」。頭頂には毛が無く、首にまとめてあるらしい。イメージがしにくくてこの上ない。たとえるならガンダムナドレの前部動力ワイヤー?(なおさらわかりにくい)

*1:上の引用は世界人最上級のあいさつ