杜の都のSF研日記(アーカイブ)

旧「杜の都のSF研日記」http://d.hatena.ne.jp/sftonnpei/ 内容を保管しております

選択者は混沌の時間線を迷い 「Steins;Gate」

XBOX360版もやったけど、PC版を買った俺が通りますよ。というわけで珍しいADVのレビューをば。ネタバレは極力抑えてあります。

      シュタインズゲート
それが、運命石の扉の選択か。
エル・プサイ・コングルゥ

Steins;Gate (シュタインズ・ゲート) (通常版) - Xbox360

Steins;Gate (シュタインズ・ゲート) (通常版) - Xbox360

STEINS;GATE

STEINS;GATE

2010年、秋葉原厨二病から抜け出せないでいる大学生、自称狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真」こと岡部倫太郎は幼なじみや同級生とともに「未来ガジェット研究所」なるサークルで役に立たない発明品を作っては高笑いするヘンな毎日。
そんな中、彼はUPXで一人の少女と出会う。サイエンスに論文が掲載されるほどの脳神経研究の第一人者である天才少女、牧瀬紅莉須。だが、岡部はUPXの前に彼女に一度会っていた。ラジオ会館で血まみれになって動かなくなっていた彼女を目撃した、という形でだが。しかもその事実を友人に伝えるメールは5日前に届いていたという。いったい何が起こったというのか?
調べていくうちに、岡部と彼の仲間の発明品、「電話レンジ(仮)」は偶然にも過去にメールを送信する機能を備えていたことが判明する。じゃんじゃんメールを送って過去を変える実験を始める岡部たちだったが、やがてその安易な行動は取り返しのつかない事態を招いてしまう。
ラジオ会館に突き刺さった謎の人工衛星、ネット匿名掲示板に現れた自称未来人「ジョン・タイター」、岡部と周囲の間の断絶した記憶、ヨーロッパの大型研究機関SERNで進められる陽子衝突実験の真実。夢の機械を発明してしまった事で、人類の大きな転換点を託されてしまった彼の運命は?


第一感想は「本当によく時間ものを研究してあるな」ということ。タイムトラベルが生み出す問題と、その解決策を定石通りにたどりながら「想定」とサブタイトルにある通り、ではタイムトラベルを理論的に考えた場合どこまで現実世界では迫れるかというものを用意したうえで、そこに少しずつフィクションを加えていくことで現実からさほど遊離していないもっともらしい独自のタイムトラベル理論*1が構築されていく。そもそも、あのネット時代の都市伝説をうまく落とし込んだもんだ。ただし、それにガジェットを合わせるためにIBM5100の利用法だけは無理矢理な感じがしなくもないが。ジョン・タイターに関してはネット上の話題だっただけにネット上を漁ればいくらでも情報が手に入る。予習しておくと色々面白くなる。

未来人ジョン・タイターの大予言―2036年からのタイムトラベラー (MAXムック)

未来人ジョン・タイターの大予言―2036年からのタイムトラベラー (MAXムック)

時間という大きな障壁の前に主人公は決断を迫られていく。変えてしまった過去それぞれに、変えた人間の思いが込められている事を知った岡部は苦悩することになる。過去改変はある出来事を「なかったことにする」能力。だが、それを自分からは「なかったこと」にすることはできない。そして究極の決断がやってくる。未来を救うための代償は大きい。何かを犠牲にしなければ得られないものか。最後には、それでも主人公は挑戦していくことになる。その過程で(かつては恥ずかしいと思っていた)厨ニスピリットが自身を鼓舞する、という驚きの展開を見せる。あれだけウザかった言動がまさか最後にはあんなにカッコいいものになるとは。「なかったことにしてはならない」 ゲームを終える前に、この一言の持つ意味をしっかり噛み締めてもらいたい。
シュタインズ・ゲート 公式資料集 (ファミ通Xboxの攻略本)

シュタインズ・ゲート 公式資料集 (ファミ通Xboxの攻略本)

疑問の多くはこれで解決するが、わざと推論(もしくは妄想)の余地も残してあるそうなのでまぁ頭を使ってみるのもいいかと。とくに、ハードSF読者な皆さんが一番ツッコミを入れたがるであろう「36バイト圧縮」の問題に関してはかなり意味深なことを書いてあるのだが、せっかくなので読んでのお楽しみということで。もしかして、科学シリーズすべてに関わる伏線なのかしらん。あと、一研究機関であるCERNがあんなことになってるのは… ほら!『天使と悪魔』で散々いじられたから!○役になれるのはそれだけ評価されてる証だって誰かが言ってた!逆に本作でCERNの存在を知った方は、これでも見て本当の姿を知り誤解を解いていただきたい。ラージハドロンコライダー・LHCの解説(どうして必要なのか/どういう仕組みか)をラップでどうぞ。

個人的には「時間もの」なので、『マイナス・ゼロ』的に「電気街へと変化してゆく途中の過去の秋葉原」や、途中で登場する「電気街のまま発展した萌えの無いパラレル秋葉原」の話も少し見たいんだぜ。前者は3本+あと1追加される予定の外伝漫画のうちの一つ、天王寺のおっさんが主人公の『恩讐のブラウニアンモーション』でちょっと出てくると思うので期待して待つ。
>コミッククリア 『Steins;Gate 恩讐のブラウニアンモーション』
>http://www.famitsu.com/comic_clear/se_sg/


あとは安定して動作してもらえるとお勧めしやすくなるんだが。自分はGeforceで3Dゲーム用マシンを組んだのでストーリー中にフリーズするような問題はなかったが、なぜかメニューから終了を選んだのに正常終了しなかったりメニュー画面で落ちたりすることがあった。他の人でも相性問題やエラーなどが今も頻発しているらしい。より安定したパッチが出る事を期待。
XBOX360版をやってると、コントローラーが振動するというのがメール着信で非常に一体感を感じて良かった。着信音も無駄に凝ってるので色々変えてみたくなる。某体感型次世代機で出してたら、コントローラーから音も出せる*2からもっとおもしろかったかもしれない。まぁ、『428』同様ユーザー層が被らないか。

こちらの小説版も完結編が冬出るとの事。昔、かのメタに切り込んだノベルゲーの小説版は、あんな情報量のテキストを薄めの一冊に無理矢理超圧縮したためゲル化とかいうレベルじゃなくなっており、ゲームをやった後では「ちょい待てぇい!」という気分になったが、こちらはゲームを中期の川上稔クラスの厚さに濃厚に落とし込んだ上で、「ゲーム中の厨二岡部を一人称のラノベ主人公に置き換える」というのが面白い。そしていくつもゲームと違う点があり、これらがどう流れに変化を持たせてくるか期待大。…そういってる間にラジオ会館が本当に改装という話が出てくるとは思わなかった。
まさか、俺たちがいる世界線は、まだ境界面ではないということなのか...??!!


おまけに続きます。
(ちゃあしう)

*1:もちろんそこには話のお約束のための都合もある

*2:レッドスティール」で携帯電話が鳴った時はマジで感動を覚えたクチ。リロード音もリモコンから出るのが好きだった。