杜の都のSF研日記(アーカイブ)

旧「杜の都のSF研日記」http://d.hatena.ne.jp/sftonnpei/ 内容を保管しております

「Steins;Gate」の後はこれを見ろ! ゼロ年代時間テーマ映画セレクション

先に「『Steins;Gate』は『時間もの』を良く研究している!」と言ったけれども、じゃあ他の『時間もの』って何なのよという人もいるだろう。トゥルーエンドを迎えて賢者タイムに入ってしまった人も(自分も結構長かった)同じような話をさくっと楽しみたい人も多いはず。というわけでシュタゲ後(もちろん先でも可。より楽しめる)におすすめなタイムトラベルや特殊な時間を扱った作品群を紹介していこう。  ...といっても、そういう作品はたいていSFであり、SFオタってのはとかく前提知識だ古典だとうるさい説教をするものだと言う先入観をもたれているし、肝心の当人達がそれに囚われがちだったりするもの。そうなってもウザいだけなのでここはあえて「古典」抜きでいってみよう。90年代〜ゼロ年代に絞って紹介する。


バック・トゥ・ザ・フューチャー』『時をかける少女』についてはあえて触れなくていいよね!というか前者に関して言えば、子供のうちに見たことない人いないよね!
戦ごk…についても個人的には小説の方が「歴史がこんなことをする理由」が説明されていて好きなので割愛させていただきます。

星マークはお勧め度、ではなく「難易度」なのでご注意を。けっこうややこしい話が多いので。

バタフライ・エフェクト

難易度 ★★☆☆☆(分かりやすくてせつない)
子供の頃から記憶障害を患い、うまく思い出せない日々が多い主人公。だが不意に思い出した一言は巡り巡って幼なじみの死を招いてしまう。必死に記憶を探る彼はやがて、過去の自分の日記を読む事で「その時点に戻る」という能力に気がつく。これを使えば彼女を救えるはずだったが、彼の過去改変は空回りしはじめ、うまく彼女を幸せにする事が出来ない。いったいどうすればいいのか... それでも彼はまた過去を目指す。
ちょっとエグい描写も多いが、幼なじみのために何度でも過去に戻ろうとする主人公の行動には心動かされるはず。

もう一つの非常に衝撃的なエンディングはレンタル版にはない(昔書いた気もするけど大事な事なので二回言いました)ので注意!映画の結末はトゥルーエンドを思い出す人も多いようだけど、個人的に結論自体はフェイリスエンドに近いと思うがどうか。

サマータイムマシン・ブルース

難易度★☆☆☆☆(お気軽にどうぞ)
SF研だというのに本も読まず、パラドックスのパの字も知らない仲良しグータラ大学生達。そんな彼らの前に、ある日突然未来からタイムマシンが出現する。せっかくなので数日前に壊してしまい、動かなくなったエアコンのリモコンを取ってこようとした彼らは、やがて生じる大混乱を収集せねばならなくなる。
ドタバタ喜劇。でも収拾の付け方や後味もちゃんとしている。個人的にリモコン直せない担任の話がちょっとくるものがある。昔「工学部だろ!全自動卓ぐらい直せ!」と無茶ブリされたことを思い出す。
古典的ではあるが、やっぱりタイムトラベルは夏と相性がいい。ハルヒのタイムトラベル関連エピソードも消失を除けば夏だし。

オーロラの彼方へ

(追記:入れようと思って完全に失念していた)

オーロラの彼方へ [DVD]

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難易度★★☆☆☆(SFにサスペンスと家族愛が程良くミックスされた良作)
 1969年、ニューヨークでも観測できるほどのオーロラが空を彩る中、ニューヨーク・メッツを愛する消防士フランクは綺麗な奥さんと立派な息子「ちび隊長」ことジョンに支えられながら幸せな毎日を送っていた。消防活動と言う危うい仕事を続けながらも、その幸せは永遠に続くかに見えた。
 打って変わって1999年、30年ぶりのオーロラが輝く下で、かつての少年ジョンはやさぐれた刑事になっていた。親父のフランクは消防作業中の事故で亡くなり、肩を壊して野球への夢は絶え、奥さんとは破局し、かつての未解決事件「ナイチンゲール殺人事件」の遺体が発見されて仕事は増え…と人生は陰鬱の中にあった。
 そんなあるとき、親父の遺品である無線機をいじっていると、聞こえて来たのは懐かしい声だった。夜や太陽活動の変化でいつもは聞こえない無線が聞こえてくることはたまにあるが、今回はオーロラが未知の現象を引き起こし30年前と時空をつなげてしまったらしいのだ。ジョンは警告を送って父親の事故での死を回避させることに成功する。しかし、今度は過去を変えすぎた。一種のバタフライ効果により、今度は母親が当時の連続殺人の標的として殺害されていたことになってしまったのだ。過去と現代、二つの舞台で繰り広げられる追跡劇。果たして親子は連続殺人犯を止められるのか?
 野球をこよなく愛する二人の連携プレーが見もの。過去と未来で交信は出来るが、物は送ることができない(はず)。果たしてこのギャップをどう解決するのか?犯人にハメられ、警察に拘留されてしまった親父、そして途中で壊れてしまう無線機。そして現代で静かに隠れていたはずの殺人鬼も、ジョンの捜査に気が付いて行動を起こす。2人の運命は?アットホームなドラマにサスペンスが突如入ってくるのはビックリだが、時間の隔たりをアイデアで切りぬけていくスキのない脚本は見事。
ネタバレ注意だけど一つだけ気になることが。「バタフライ効果で野球の結果は変わらないのか」 まぁ、それをやっちゃうと途中で刑事を説得できなくなるのでマズいのだが。

『デジャヴ』

デジャヴ [DVD]

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難易度★★★☆☆(ちょっくら複雑 だが、シュタゲほどではないはず)
フェリーを狙った大規模爆弾テロが発生。捜査官ダグ・カーリンはあらかじめ焼かれて爆破テロの被害者に偽装された謎の女性の死体を発見。彼女の車が爆弾テロに使用された事から重要参考人として調べようとするが、彼は女性の顔にどこか既視感を感じるのだった。その頃、米国防総省は特殊な監視システム「タイムウインドウ」を開発していた。指定したエリアの4日前の風景を切り取って表示できる画期的なシステム。タイムウインドウによる極秘の捜査チームに参加したダグは、問題の女性をマークする事にした。やがて彼は生前の彼女に惹かれていくとともに、このシステムの仕組みに疑問を持つ。この装置が映し出しているものとは何なのか?

テロを扱った現代サスペンス... の皮を被ったタイムトラベルもの。しかし、道具立てが非常に現実的に描かれているので、確かに監督の言う通り単なるSF映画とはちょっと違った雰囲気を醸し出している。とくに過去の犯人とのカーチェイスなどは(ハタから見れば大迷惑だが)。
深く考えていくと結構重大な事に気がつくが、そのあたりは先日金曜ロードショーでの放映に合わせてアップした本記事を参照してほしい。そのことまで気がついてるシーンがあれば... おそらく完全にSFと化してしまって誰も付いてこないか
>「やっぱり見ていたような雰囲気 「デジャヴ」時間軸解釈完結編?」
http://d.hatena.ne.jp/sftonnpei/20100616/1276705558

『プライマー』

プライマー [DVD]

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難易度★★★★☆(なかなか難解 自分で表を書いてみないと??)
ガレージベンチャーで一攫千金を夢見る男達。彼らが作り出した超伝導装置を組み込んだ「箱」は、一種のタイムマシンだった。だが、タイムトラベルを行えば、必ず生じる問題があった。過去に戻ったときに生じるもう一人の自分「ダブル」の存在。逆転の発想でこの問題をうまく回避したつもりの彼らだったが、やがて記憶にない事件が次々発生する... どちらかが勝手にマシンを使ったのか?二人の男達は、混乱の中へと巻き込まれてゆく。

ガレージベンチャーでの(半分趣味に近い)発明稼業、箱の中に入れたある物体の変化がタイムマシン発明へのきっかけというあたりはいかにもシュタインズゲートを彷彿とさせる。しかしタイムトラベルの度に分身が勝手に増えていき、いったい何が起こったのかに関して今でも議論があるほど事態は複雑化してしまう特異な構成をもつ独特なテイストの作品である*1。混乱する話はイやんという意見もありそうだが、ちょっと頭を絞ってみるのもおもしろいかと。自分がこの手の映画を好きになり、自分で映画見ながら時間軸表・タイムラインとか引いてみるきっかけになった作品でもあります。紹介してくれたミス研の某氏に感謝。


そうそう、正確にはゼロ年代じゃない(1993年公開)が、シュタゲ関連映画といったらこいつも紹介せねばなるまい。

『恋はデジャ・ブ』

恋はデジャ・ブ [DVD]

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難易度★★☆☆☆(単純に見えて、意外と深い話。隠れた名作として今も有名)
自意識過剰なお天気キャスターは春の目覚めを占う珍しい祭り「グラウンドホッグデー」の取材のため、クルーとともに飽きるほど来た街へ向かう。祭り当日、しつこいセールストークを繰り広げる旧友に会ったり溝に脚を突っ込んだり冷たいシャワーを浴びたり吹雪で動けなくなったりと色々ツいてない取材を終えて翌朝起きると... また祭りの当日の朝になっていた!彼は同じ祭りの日を繰り返す街に閉じ込められてしまったのだ。しかもそれを意識しているのは彼ただ一人。他の人間はいつもほぼ同じことを繰り返しているだけ。飽き飽きし始めた彼は、やがてループを逆に利用して羽目を外し始める。だが、それも長続きはしなかった… はたして彼の運命は??


われらが阿万音氏が見た映画として本編で紹介されているもの。いわゆる「時間の無限ループ」にはまり込んでしまった男の悲喜劇という趣だが、ループを重ねていくにつれ得られる知識をアコギな事に使う・悲観する・そして... と変化してゆくビル・マーレー演じるレポーターの心情変化はなかなか見事だと思う。
(ここからゲーム本編のネタバレを含みます)
阿万音氏の本作に対する評価は結構厳しいが、これは彼女が彼女の世界で厳しいサバイバル+戦闘を続けてきて、責任感が強いのと無関係ではあるまい。だからこそ2000年に自分が何もしていなかったことに「気づいてしまった」時に自分が許せなくなって悲劇に繋がってしまったのではないか。そう思うのであんまり本作をディスったことについては責めないであげてほしい(阿万音氏の親父さんとの約束だお!)。 
あと、世界線変動率表示がロシア風味なニキシー管なのは由来不明だけど*2タイムリープマシンの時刻表時がパタパタ時計なのは本作の影響である事に間違いは無いだろう。
…というか正式名称「パタパタ」でいいのかっ! 初めて知った。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%BF%E3%83%91%E3%82%BF%E6%99%82%E8%A8%88


これら以外にも『イルマーレ』『ある日どこかで』『タイム・アフター・タイム』と様々な時間と恋愛を絡めたテーマの映画があるのでこちらもぜひぜひ楽しんでもらえるといいのではないかと。では。
(ちゃあしう)

*1:古典SFで言うところのハインライン「時の門」タイムトラベラーが3人いるせいで矛盾が解ききれないVer とでもいうべきか

*2:昔の調理機能付き自動販売機には結構ニキシー管が付いていたらしい。あと細田守版『時かけ』では某社の目覚まし時計の赤いLED表示だったけどそのあたりか