杜の都のSF研日記(アーカイブ)

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燃えつきた地図 長編ゲームレビュー「GERMS・狙われた街」

密林やショップでデストロイ オール ヒューマンズ!が大ブレイク中だそうで。東京では出荷数のせいか入手するのも困難だとか。
クリプト君をさらに製造して達成率を100%にしたが、あれ以上には何も出なかったので(当然、12話はなかった)隠し要素として
はここまでなのだろう。プローブ集めに精を出すよりは新しく始めて、聞いていない会話を回収するほうがいいと思う。
参考:元ネタまとめwiki
http://www28.atwiki.jp/cryptosporidium/
こういう感じの「トンデモ」と言うかSFの基本的「第三種接近遭遇」はよくゲームの導入として使われる。
THE地球防衛軍しかり、UFO A day in the life しかり。侵略だって言ってみれば接近遭遇の延長上に
発生した事態であるわけで、異星人と戦うゲームは枚挙に暇がない。
しかし、このゲームのような濃いトンデモネタ+街を自由に散策できる箱庭ゲームを
初代プレイステーションで行おうとした無謀なソフトが実は存在するのである。

GERMS 狙われた街

GERMS 狙われた街

「ジャームズ・狙われた街」 売り文句はずばり「地球侵略心理アドベンチャー」という。
実はパッケージが裸体というなんだかPSソフト市場最も危険な香りのするソフトだ。
ぱっと見では気づかないけれども。
 主人公である「あなた」は、高校時代まで住んでいた炭鉱の町に新聞記者として戻ってくる。
しかし、街では大きな何かが起ころうとしていた。謎の発光体の目撃談、まるで別人に豹変する人々、
知り合いが何かに乗っ取られているという集団妄想の発生、そして旧友がつかんだ街全体の「時空の歪み」。
そして「あなた」は目撃する。「何者」かが街へ入り込み、次々に人々を「変化」させている現実を!

 内容は一人称視点のフルポリゴンアドベンチャーゲーム。雰囲気としてはDOOM系よりキングスフィールド
に近い。「あなた」は新聞社のパソコン通信や電話で情報を仕入れ、何かが起こっている可能性のある建物へ
徒歩・自動車・地下鉄・バスなどを使って移動する。そしてその建物内で情報を集め、謎を解き、この街の変化を
阻止するために戦うことになる。体力やスタミナ管理・疲労度も細かくパラメータ化され、移動の合間にはちゃんと睡眠や
食事をとることも必要。病院やカイロプラクティックで体力回復、レストランやファーストフード店でスタミナ回復
が行える。ゲーム中では現実世界の6倍の速度で時間が進む。街の中で実生活を営みながら事態収拾(新聞記者の仕事じゃない
などと言ってはいけない。これはこの街どころかこの惑星の危機なのだ)を図ることがこのゲームの目的。

 GERMS狙われた街に特筆すべき点はいろいろあるが、一番大きいのが人々の「変化」と「残留思念」。
この街の住人は次々に心身ともに奇妙な存在へと変わりつつある。そしてそれが頂点に達すると
完全に人間とは別のものへと「変化」してしまう。人間だけでなく動物や機械も変化し、キメラ化した住人も多数存在する。
変化した人間の会話は色が違うので外見が変わらなくても判別ができる。そして多くの場合、変化した人間はこちらを攻撃してくる。
一般的FPSよろしく多数の武器を友人からもらったり町中の武器店で購入できる*1のでたいてい戦闘へと発展するのだが
その後倒した相手の「残留思念」をなぜか「あなた」は直接閲覧できる。この残留思念をヒントに戦闘やストーリー
を進めていくことになる。これが「心理」アドベンチャーたるゆえん。(「デストロイ」の「脳波スキャン」に近い。ただし殺さないとダメ)

 このゲームが恐ろしいのは敵に倒されてしまったとき。なんとそのままゲームオーバー、とはならず
自分も「変化」させられてしまう。(右上のアイコンに注目)
体力もアップし戦闘力も強化される。ある場所に行けば 元に戻してもらえるが、そのまま友人や一般人に
会うと化け物扱いされ攻撃されたりする。立場を気にしなくてはならないゲームはいろいろあれども完全に逆転するとは…
 他の箱庭ゲームと同様に通常時も一般人殺害が可能。あんまり派手なことをしていると警察署に連行と言うこともあるので
モラルもある程度試される。


 扱っているネタはこのゲームでも本当に膨大。高校時代の旧友は親の遺産で時空連続体などの怪しい研究に没頭中。
ミステリーサークルの近くには彼の友人でフリーエネルギー・オルゴン研究の第一人者がいたり、
町外れでは「テンプル・オブ・ユニバース」なる自己啓発セミナー(超能力者集団)が活動中。そこには
町のエネルギーの中心が存在する。教会は原始宗教から発達した秘密教義を隠し、次々と信者が行方不明に。
さらに「変化」の拡大で街は外部から軍隊により封鎖され、主人公は国防省から派遣されたエージェント
といってもどう見てもMIBなおっさんと接触するハメになる。さらに「宇宙戦争」のトライポッドもどき
から隔離病棟に押し込められた哀れな未完成品たち、はたまた地底人や地下水路につながる古代遺跡とホントによく
作りこまれております。

 しかし、モノは初代PS。やれることには限界がある。特に「街一個フルポリゴンで」ということ分からくる制約を「50年代海外ドラマ風」*2と逆転の発想で克服し 
それでも昔のドラマ風の雰囲気を尊重すべく*3、外の風景はなんと
白黒!しかも「炭鉱の寂れた町」という設定とはいえ建物内以外人っ子一人いない。これはテレビ受像機の故障
ではありません!ただしイベントのある建物前にはこれみよがしに赤い矢印が。これはちょっとセンスがない。
それでも手は決して抜いておらず、アーケード街から鉄道操車場、炭鉱や発電所・大邸宅まで
見事に再現されている。建物内部も細かく、トイレもちゃんと二種類に分けてあったり芸は細かい。

 ただ、あまりに街を大きく作りすぎて、移動にばかり時間を食う。車はポリゴンの継ぎ目でしょっちゅう
引っかかるし歩く速度は遅い。車が動けなくなったら公衆電話を探して車を移動してもらわなければならない。
「箱庭」というシステム自身が欠陥を抱えてしまっているゆえストレスフルなゲームになっている。
 リアルさを追求するために追加された食事や睡眠、そして時間管理も行動の足かせにしかなっていない。
多くの箱庭ゲームが時間制約を特に持たないのは自由度を上げるためで、ミザーナフォールズブロークン ヘリックス*4ガンパレのようなゲームは
NPCが特定の時間にする行動が存在するため逆に時間は重要な要素になる。しかしジャームズでは「何時にしか会えない」という
イベントはほぼない反面「何時になると店・交通機関が使えない」という事態が頻繁に起こる。

 サイケデリックでシュルレアリズムな変化した人たちが会話や残留思念で電波をびんびん出しているわけで、ストーリーという点
でもシステムという点でもまったく一般人向けでない恐るべきゲーム。多くの人が途中で嫌悪感をからプレイを中断しているとか。
それでもこれほど「他にない」ゲームは滅多にないので、見かけたら保護してあげるのも一考かと。
今の技術を用いれば化けそうなゲームではあります。外や地下鉄でのイベントがあるだけでも雰囲気倍増ですし。
やはり早すぎた?
自分はエンディング(?)までやるほどハマりました。別の意味で中毒性があります。
もっと評価されてもいいと思うんだがなぁ。トンデモ的にもシステム的にも。


追記:他サイトの情報等(非常に少ない・・・)
・「ジャーム 狙われた街」に言及しているサイト
http://www23.tok2.com/home/akusoumen/
http://www.eonet.ne.jp/~terry/index-j.html
http://www.geocities.jp/broadband1968/main/main.html
http://web.archive.org/web/20021116161812/www2.wbs.ne.jp/~gamekids/tarutaru-5.htm
・「GERM」に言及しているブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/kihane_uwo/6134153.html
http://game.coden.ntt.com/@0510/iframe/diary/323451.html
(3/24追加)
http://chicosan.blog.shinobi.jp/Date/20070321/
http://d.hatena.ne.jp/NTZ/20070322/1174577388
ネタ元:「Second Lifeとは違う」3D仮想コミュニティ「splume」がスタート
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/17514.html
ジャームズの系譜は途絶えてはいなかった!でも、扱いは低いなぁ。俺は好きだぞ。
ということはsplumeでもカイロプラクティックで体力回復ができるのか(何
・GERMSを製作したKAJのサイト
http://www.kaj.co.jp/
あの「人体III 遺伝子」のCG作ってるのね
しかし2.5キロメートル四方というには広すぎないか・・・???


あと、ニコニコ動画にラストまである攻略動画あり。早回しが多いのはご愛嬌。
D
(ちゃあしう)

*1:住民は日系ばかりだがいちおうアメリカらしい また、「武器を持ち歩かないと危険です」と助手に言われる

*2:「インベーダー」「事件記者コルチャック」とか ただしこのゲーム、記事を書くシーンなんかないぞ

*3:http://chicosan.blog.shinobi.jp/Date/20070326/参照。最初はカラーだったらしい

*4:前者は「ツインピークス」のような事件を追うGERMSに似た推理アドベンチャー、後者はエリア51へ潜入する洋ゲーで、このような時間仕様を「4次元管理システム」とウリにしている