ルシアン・ネイハム「シャドー８１」
グラントにとっての一番の気がかりは、彼のような優秀な中堅パイロットの相当数が、たかだか数枚のジャングルの木の葉を除去しようとして、”くたばった”、つまり殺られてしまったということである。
- 作者: ルシアン・ネイハム,中野圭二
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1977/04
- メディア: 文庫
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- 作者: ルシアンネイハム,Lucien Nahum,中野圭二
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/09/01
- メディア: 文庫
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ロサンゼルス発ハワイ行のジャンボ機が正体不明の戦闘機によってハイジャックされる。地上からも空中からも手が出せない中、犯人は大量の金塊を要求。全アメリカを震撼させる大胆不敵な犯罪計画の運命は？早川文庫「強い物語」キャンペーンで復刊した人気の高い一冊。
この人もいわゆる「ワンヒットワンダー」な人で、この後は忘れられて他界したというが、ベトナム戦争によりワリを食った軍人たちの不敵な計画を一番楽しんでいるのが日本人というのは、ちょっと米国における本戦争の与えた「影」を感じなくもない。まぁ連中「俺たちが国を愛したように国も俺たちを愛してほしい」という帰還兵をスーパー愛国ヒーローに改変しちゃうようなお国柄だけど。
何はともあれ、時間・距離・燃料そしてお金、すべてにおいてち密に計算された計画の遂行がワクワクさせる。その中にマネキンみたいなアホな話*1やSPAM缶をクラッカーで挟んだひもじいメシのような話が入っているのがまた一興。
人によってはこういう小説を「手段のためには目的を選ばないギミック小説」と毛嫌いする向きもありそうだがそんなことはない。理不尽な国の方針転換から計画を思いつく将軍とパイロット、残念ながら巻き込まれてしまうがそれでも乗客の安全と平静を保とうとする機内クルー、犯人を論破しようとして赤っ恥の上院議員にスクープを狙って危ない橋を渡る記者。登場する憎めないキャラ達の掛け合いも魅力だ。作者自らいわく「情が移って一人も死なさず結末を迎えさせた」というぐらいだそうで。確かにこれだけ大規模な犯罪で死人が出ないというのはなかなか珍しい。え、爆撃されてるベトコン？いや、ノーカウントノーカウント（ぇー
劇中で計画のカギを握る登場する戦闘爆撃機・TX75Eはいうなれば現実のアメリカにとっては夢の存在。可変翼で垂直離着陸可能！…バルキリーかいな。アメリカは戦後すぐにありとあらゆる方法の垂直離着陸機（VTOL)を試作しているが、それのほぼすべてが物になっていない。実用化されたのはイギリス人がその「英国面」を存分に発揮したハリアーとコンピューター制御が飛行を可能とするV-22のみ*2。F-35はどうなることやら。
それこそ玉石混交どころか有象無象の計画案の中にそれっぽいものを発見。AVS・Advanced Vertical Strike fghter
http://www.aiaa.org/tc/vstol/unbuilt/ewr/index.html#AVS
フェアチャイルド社とリパブリック社＋西ドイツが共同で１９６６年に計画していたリフトエンジン型の「可変翼機」がコレ。戦闘爆撃機F-111のVTOL版みたいなものか。リフトエンジンを展開した垂直離着陸シーンがステキすぎる！が、例の如くペーパープランで終わっている。どう考えても６つ積んでるエンジンのメンテが大変だし。そもそも実用的な燃料搭載量を稼げるのか？
今回新潮から早川への版移動ということだが、この調子だと東ベルリンで活動を行っていた実在のベルリン・パトロールが活躍するカーチェイス小説「A-10奪還チーム出動せよ」なんかも早川から出ちゃったりするのか。ちょっと期待。
（追記）
１年後、本当にハヤカワから出ちゃいました イヤッホォォォォォゥ！
＞http://d.hatena.ne.jp/sftonnpei/20090917#1253211868
本当にどうでもいいおまけ
「おいおい、ブレイガン、おれを引っ掛ける気か？空軍には超音速戦闘機というものがあることを知らないほどあんたはばかじゃないはずだ。フォート・ノックスにはゴッドマン空軍基地があって、たくさん置いてある。」
…マジでその名前なのか？
http://en.wikipedia.org/wiki/Fort_Knox#Air_Corps_usage
本当にフォート・ノックスにはGodman Army Airfieldという空軍基地があるようだ。かのマンテル大尉墜落事件の舞台でもあるとか。
なんだか突然赤いヒーローが飛んできそうな基地名だ。
